仕上塗材とは

仕上塗材は意匠目的で建物の内外装に用いられている材料です。立体的な凹凸があり、厚さ数ミリと通常の塗料に比べて厚いことが特徴で、リシン、スタッコ、吹付けタイル、じゅらくなどと呼ばれることもあります。

これらの塗材を施工するときに、ひび割れやダレを防止するためにアスベストを添加していたことがあります。また、塗材の施工前にコンクリートの表面の凹凸を埋めるために塗る下地調整材にも、アスベストが含まれていた事例があります。

仕上塗材本体と下地調整材のどちらにアスベストが含まれていたかによって、除去の方法や施工範囲(深さ)が変わりますので、解体等の工事前の調査の際には、どの部分にアスベストが含有しているかを調査する必要があります。

アスベスト含有仕上塗材の除去方法

令和3年度の大気汚染防止法改正により、アスベスト含有仕上塗材(下地調整材を含む)の除去を行うときに必要な措置が明確になりました。必要な措置の概要は以下のとおりです。詳細については、環境省作成のマニュアル(外部サイトへリンク)をご参照ください。

基本的な考え方

アスベスト含有の仕上塗材や下地調整材を除去する場合、アスベストの飛散を防止するため必ず湿潤化を行う必要があります。また、除去した塗材の破片が飛散しないよう、作業内容に応じた養生を行うことが求められます。

一般的に仕上塗材や下地調整材は水を吸いにくいため、散水しながら除去作業を行うなど、除去作業中も材料を湿潤な状態に保つ必要があります。湿潤化に使用した水にはアスベストが含まれているため、適切に回収・処分する必要があります。

以前は吹付工法で施工された仕上塗材は大気汚染防止法の届出対象でしたが、令和3年施行の法改正により届出は不要となりました。労働基準監督署への届出も原則として不要となりました。

廃棄物については特別管理産業廃棄物ではなく、石綿含有産業廃棄物として処分することが可能ですが、比較的飛散のおそれが大きくなるため、固化剤等で処理したうえで2重袋に梱包して処分をしてください。

剥離剤を用いる工法

仕上塗材の種類によっては、剥離剤と呼ばれる薬品を用いて、仕上塗材を軟化させて除去することができます。剥離剤の種類によって軟化できる仕上塗材の種類が変わるため、現場で確認試験を行ったうえで剥離剤の種類を決める必要があります。

剥離剤による軟化は湿潤化と同じと扱われるため、追加の散水などは必要ありません。また、養生については軟化した仕上塗材で周囲が汚れない程度のもので作業ができます。また、廃棄する際の固化剤等での処理は不要です。

剥離剤で塗材が軟化するには時間がかかることが多いです。また、下地の状態によっては塗材が残ってしまうことがあります。剥離剤を使用する場合には、除去後の確認を慎重に行い、取り残しがある場合には他の工法を併用するなどの対応をお願いします。また、ジクロロメタンなど有害性や臭いの強い溶剤を含む剥離剤の使用は控えてください。

高圧水を用いる工法

高圧水を用いる場合、湿潤化は十分に行われますが、アスベストを含む廃水が周囲に飛散しないよう、十分な養生を行う必要があります。廃水はすべて回収し、そのまま産業廃棄物として処分するか、凝集沈殿などの水処理を行う必要があります。処理後の水を下水道に放流する場合には、必ず事前に下水道局に相談をしてください。

廃棄物については汚泥状となるため、高分子吸水材やセメントなどで固化したうえで、頑丈な袋に2重梱包して処分してください。

専用の器具を用いて、高圧水による除去とバキューム車による廃水の回収を同時に行う工法もありますが、バキューム車からの排気にアスベストが混じらないように、HEPAフィルターを通して排気をしてください。また、建物の角の部分に器具が入らず取り残しが生じてしまうこともあります。必要に応じて、他の工法を併用するなどの対応をお願いします。

電気グラインダー等の電動工具を使用する工法

電気グラインダー等の電動工具を用いてアスベスト含有仕上塗材の除去を行う場合、アスベストの飛散のおそれが大きいため、プラスチックシートや防音パネルを用いて、作業現場を隙間なく隔離養生する必要があります。負圧をかける必要はありません。

電動工具を用いる作業を行うときは、散水などで除去対象の塗材を常時湿潤化することが必要です。感電に注意して、作業完了まで湿潤な状態を維持してください。一般的に塗材は水の吸い込みが悪いので、作業前の湿潤化のみで作業をすることはできません。

十分な集じん機能を有する電動工具を用いる場合には、隔離養生と常時湿潤化を省略することができます。十分な集じん機能を有すると判断するためには、最低限以下の要件を全て満たすことが必要です。また、工具の性能を証明できる資料を工事現場に備え、作業完了の記録にも添付する必要があります。

  • 集じん装置とカバーを備えていること
  • HEPAフィルターを有し、集じんした石綿が外部に漏出しないこと
  • 作業中の作業場所の総繊維濃度が0.15本/立方センチメートルを下回ること(現場での測定ではなく、実験データで構いません)

隔離養生及び湿潤化と同等以上の措置による工法

負圧隔離をする工法など、アスベスト含有の吹付材や保温材の除去等に用いることができる措置は、アスベスト含有仕上塗材の除去の場合も、隔離養生及び湿潤化と同等以上の措置として用いることが認められています。作業範囲などの状況によっては、グローブバッグを用いて作業できる場合もあります。

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